おはようございます。

今週は核融合、電力系スタートアップが資金調達を実施したと発表しました。


レアアースをめぐる最近の議論について

電気自動車や風力発電の拡大とともに、希土類金属(レアアース)が改めて注目を集めています。ネオジムやプラセオジムという金属は高性能磁石に不可欠であり、脱炭素社会の基盤技術を支える存在です。

しかし、その規模感を一度冷静に眺めてみると、興味深い事実があります。
 世界のレアアース消費量は年間約17万トン。鉄が16億トン、銅が2500万トンであることを考えると、流通量としては桁違いに小さい資源です。市場規模も数十億ドル規模にとどまります。

精錬工程

この資源の議論でしばしば見落とされがちなのが、採掘よりもむしろ精錬工程の難しさです。

 レアアース鉱石は地殻中に広く存在しますが、採算が取れる鉱床は限られます。さらに、分離・精製には多量の薬品を使い、場合によってはトリウムなどの放射性元素も随伴します。この点で、中国が1990年代以降に精錬能力を集中させたことは構造的な意味を持ちました。現在、精製・分離能力の大部分が中国に集中しています。レアアースそのものの市場規模は小さい一方で、磁石や電子部材を通じて広範な産業に波及するため、供給集中が地政学的リスクとして意識されるのも自然な流れです。

最近では、日本近海の海底レアアース資源にも注目が集まっています。放射性元素の含有量が比較的少ないとされる点は確かに一つの利点です。ただし、品位の低さや深海開発に伴う設備投資、前処理・精錬コストを総合的に考えると、投資合理性の評価は慎重であるべきでしょう。採掘単体ではなく、精錬能力や市場まで含めたサプライチェーン全体で設計する視点が重要です。

だからこそ、精錬所の整備を含めた供給源の多様化やリサイクルの高度化を同時に進める必要があります。都市鉱山は安全保障上の価値を持ちますが、レアアースは製品中に薄く分散しているため、経済性の担保は容易ではありません。技術開発と制度設計の両輪が求められます。

最終的な問いは、「安全保障リスクにどれだけの価値を置くか」という政策判断に行き着きます。炭素価格がCO₂削減の外部性に価格をつけたように、資源の安定供給にも何らかの評価軸を設ける議論は避けて通れないでしょう。

レアアースは巨大市場ではありません。しかし、エネルギー転換を支える小さくて重要な歯車です。だからこそ、ロマンや不安ではなく、コスト構造と制度設計を冷静に見つめることが大切なのではないでしょうか。


ニュースレターの登録はまだですか?

📩 投資情報、イベントや機会はこちらに送信してください。


📰今週のニュース

💥アメリカとイスラエルがイランを攻撃し、最高指導者アリ・ハメネイ師が殺害されました。ハメネイ師の安全保障担当顧問アリ・シャムハニ氏、革命防衛隊のモハンマド・パクプール司令官、アジズ・ナシルザデ国防相らも殺害したとイスラエルは発表しており、対してイランは中東全域で攻撃を実施しているとのことです。また、イラン革命防衛隊は28日、ホルムズ海峡での船舶の通行を禁じたと発表。原油・ガス供給混乱と、一時NY原油が一時12%超上昇、75ドル台になり、日本を含む世界経済への打撃への懸念が広がっています。

⚡️東京電力ホールディングスは、柏崎刈羽原発6号機の出力を3月3日に135.6万キロワットに引き上げると発表したと日本経済新聞が報じています。営業運転時と同じ水準になる見込みで、同出力を維持したまま18日には営業運転に移行する計画です。

🏗️原子力規制委員会は原子力発電所のテロ対策施設(特重施設)について、原発の設計・工事計画認可から5年以内とする設置の猶予措置が見直されます。国内で既に特重施設が完成した原発12基のうち、期限に間に合ったのは関西電力大飯原発4号機だけであり、猶予を見直すことで柔軟な運用を促す狙いです。

🗣️また、原子力規制委員会は20日、原子力発電所の安全審査工程の見直しに関して電力会社などと意見交換会を実施。規制委は二度手間による事業者の負担に配慮し、申請手続きを災害評価と施設設計に分割する案を示しているとのことです。


💵資金調達

🔲核融合エネルギーに必要となるベリリウムの製造を目指すMiRESSOは、Spiral CapitalとSBIインベストメントを共同リード投資家とした、12社の投資家を引受先とする、総額42.3億円のシリーズAをクローズしたと発表しました。

⚡️小売電気事業者の精算業務のDX化やアグリゲーションサービス、太陽光発電所への蓄電池併設サービスを提供するBluefield Energyは、XTech Ventures等よりシードラウンドにて総額6.6億円の資金調達を実施したと発表しました。

🔋電池における次世代炭素材料の量産を目指す3DCは、 日本カーバイド工業、東亞合成、ZER01NE Ventures、アシザワ・ファインテック、フィディアキャピタルより、シリーズAラウンド 2ndクローズにて、合計 3.7億円の資金調達を実施したと発表しました。

🔬次世代半導体の消費電力を大幅に削減する単分子誘電体の実用化を目指すマテリアルゲートは、シードエクスパンション調達にて、第三者割当増資による追加資金調達を完了、過去の資金調達と累計で9.1億円を調達したと発表しました。

🌡️砂利蓄熱技術をはじめとする独自の蓄熱技術を開発するESREE Energyは、ユナイテッド、デジタルグリッド、ReGACY Innovation Groupを引受先とする資金調達を実施したと発表しました。

♲資源循環のデータプラットフォーム「pool」を提供するレコテックは、マーキュリア・サプライチェーンファンド、かんぽNEXTパートナーズ、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、ヒューリックスタートアップ、京都キャピタルパートナーズより、シリーズAにて資金調達を実施したと発表しました。

🟢サステナビリティデータ・プラットフォーム「SmartESG」を提供するシェルパ・アンド・カンパニーは、三菱UFJキャピタル、積水ハウスより、シリーズBラウンドのセカンドクローズにて資金調達を実施したと発表しました。

♻プラスチックのリサイクルを中心とした環境事業を展開するesaは、三菱UFJモルガン・スタンレー証券から出資を受けたと発表しました。


以上、Climate Techに関する情報をご紹介しました。

Climate Techに関する新しいアイデアや、イベント、関心/興味のあるトピックがあれば、ぜひClimate Tech Japanにまでお寄せください。


ニュースレターの登録はお済みですか?


🌍安全保障のコスト #143